自民党・日本政府の動き(2015年6月~2016年3月)

※インターネット上で公表されている情報から、今回の文科大臣通知に至る経緯を日誌形式でまとめてみました。

2015年6月25日

自由民主党の「北朝鮮による拉致問題対策本部」(以下「拉致対策本部」と省略)対北朝鮮措置シミュレーション・チームが「対北朝鮮措置に関する要請」を作成し、総理官邸で安倍晋三首相らに直接手渡す政府インターネットテレビ)。13項目中の7番目に朝鮮学校への地方補助金が言及される。

七、朝鮮学校補助金を支出している地方公共団体に対し、公益性の有無を厳しく指摘し、全面停止を強く指導・助言すること。併せて、住民への説明を十分に行うよう指導・助言すること。

2016年1月6日

朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」と省略)で実施された核実験を受け、自由民主党「北朝鮮の核実験に対する緊急党声明」を発表する。そのなかで、上記13項目の「制裁強化策」を政府が速やかに実施するよう求める。

 政府は、昨年6月に党拉致問題対策本部から提言した13項目の制裁強化策を速やかに実施し、わが国独自の対北朝鮮措置の徹底を図るべきである。

1月10日

安倍首相は、山口県長門市で開かれた「新春の集い」に出席し、北朝鮮の核実験に対して「自民党拉致対策本部が示している案を参考に厳しい対応をしていく」という方針を公言する(毎日新聞記事)。

1月15日

自由民主党拉致問題対策本部の会合が開かれる。質疑応答のなかで、「朝鮮学校への自治体の補助金について文科省はどう考えているか」との質問に対し、出席していた文部科学省の関係者が「適切な「指導・助言」ができるよう今検討している。すみやかに結論を出す」と回答する。

問い 〔中略〕朝鮮学校への自治体の補助金について文科省はどう考えているか。今後の対応に付き決意表明をしてほしい。
〔中略〕
文科省 自治体の補助金は5年前に比べ、都道府県は3分の1に、市区町村は3分の2に減少している。適切な「指導・助言」ができるよう今検討している。すみやかに結論を出す。

2月7日

北朝鮮によるロケット発射を受けて、自由民主党「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」を発表する。そのなかで、あらためて「13項目の制裁強化策」の実施を政府に求める。

政府は、昨年6月にわが党の北朝鮮による拉致問題対策本部から提言した13項目の制裁強化策を速やかに実施し、わが国独自の対北朝鮮措置の徹底を図るべきである。

2月17日

自由民主党拉致問題対策本部の会合が開かれ、その場で出された議員らの質問に対し出席していた文部科学省関係者が「地方公共団体に対して、通知を発出すべく検討している」旨を回答した。以下は質問した議員のブログより引用。

そこで、私は次のような発言しました。
安倍総理自民党が昨年提案した13項目にそって、政府の北朝鮮制裁を検討したとのことです。内容について、高く評価し支持するものですが、その中に朝鮮学校への支援停止が入っていません。逆に、入っていないことが意外であり、北への逆のメッセージになっては困ります。文部科学省の対応はどうなっているのでしょうか。〔中略〕
それに対して、文科省からは、次のような要旨の回答がありました。
朝鮮学校は、北朝鮮の影響にある朝鮮総連の、人事・財務・教育内容の統制を受けていること。国は支援をしていないが、地方公共団体は個別判断で支援していること。文科省としては、地方公共団体に対して、通知を発出すべく検討している。

2月19日

馳浩文部科学大臣記者会見の席上、補助金問題について、「通知の発出も含めて必要な対応を検討している」と答弁する。

朝鮮学校への補助金は、地方公共団体の判断と責任の下に行われているものであります。このため、北朝鮮への制裁とは別に、補助金の公益性やその適正な執行という観点から、通知の発出も含めて必要な対応を検討しているところであります。検討中です。

3月4日

自由民主党の外交部会、拉致問題対策本部の合同会議が開かれ、出席した文部科学省関係者が、「朝鮮学校補助金を支出している自治体に対し、支出の妥当性を確認するよう求める通知を速やかに発出する意向」を示した(産経新聞記事)。

3月26日

読売新聞が「朝鮮学校補助の自粛要請へ…政府、北核実験受け」という見出しの記事で、「政府は、朝鮮学校補助金を交付している自治体に対し、自粛を求める方針を固めた」と報道する。

3月29日

馳浩文部科学大臣が全国の28都道府県知事に対し、「朝鮮学校に係る補助金に関する留意点について」と題する通知を発する。

その後に開かれた記者会見の席上、馳浩大臣は「朝鮮学校補助金を出す権限は自治体側にありますので、私としては留意点を申し上げただけであって、減額しろとか、なくしてしまえとか、そういうことを言うものではありません」という旨の答弁を繰り返す。