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声明呼びかけの趣旨

 2016年3月29日に馳浩文部科学大臣は全国の都道府県知事に対して「朝鮮学校に係る補助金に関する留意点について」という通知を発しました。これは大臣自身が明言したように補助金の自粛や減額などを求める内容のものではありませんが、既に各地で動揺が広がっています。こうした日本政府の動きに対して、さまざまな立場からの抗議の声があがっていますが、遅ればせながら、研究者という立場からも政府に対して働きかけようと抗議声明を準備しました。

 朝鮮学校に係る地方公共団体補助金は、国の要請によってではなく、地域社会のさまざまな事情や経緯から自主的に実施されてきたものです。都道府県による朝鮮学校への公的補助は、1970年度に東京都がはじめた「私立学校教育研究助成金」を嚆矢とし、1970年代半ばから徐々に日本全国へ拡大して、1997年には朝鮮学校が設置されている29都道府県すべてで実施されるようになりました。また市区町村からの助成も次第に拡がり、1995年の時点で朝鮮学校に何らかの形で助成金を支給している地方自治体は、27都道府県154市23区33町に及んでいました。

 またその形態も多様です。朝鮮学校に特化したものもあれば、外国人学校各種学校専修学校・私立学校など、より広い枠組で実施されているものもあります。経済的に困難な児童生徒個々人に対する補助金の形態もあれば、厳しい学校運営の足しになるように給料などにも充てられるような形態で支給される補助金もあれば、教材・教具の現物の購入にしか充てられず老朽化した校舎の修繕費すら認められないような支給形態もあります。近年になって日朝関係の悪化を口実に補助金の支給を突然停止したり留保したりしたために、国連の人種差別撤廃委員会から懸念を表明されているような自治体もあれば、支給を維持している自治体もあります。また、朝鮮学校に子どもが数多く通っている地域もあれば、休校かその一歩手前に追い込まれているような地域もあります。

 一方、今回の通知は、そうした地域事情にかかわらず一律に「留意」すべき点を徹底させるものとなっています。形式としては、朝鮮学校を認可している28の都道府県の知事に対して文科大臣が発し、そこからさらに域内の市区町村関係部局に周知させるようなトップダウンのやり方になっています。

 補助金地方公共団体の責任と判断で実施されている以上、まず各地での取り組みが重要になってくることは言うまでもありません。と同時に、「留意」という名の政府の一律的な介入に対しては、子どもたちの平等な教育環境を守るためにも、やはり地域を越えた抗議の声が必要です。つまり、日本政府に対しては通知の撤回を含む抗議の声をぶつけていくとともに、地域においては補助金の維持・充実または再開を求めていく、そのような二重の動きがいま求められています。

 その点において、研究者は大事なポジションにあります。各地でそれぞれが(文部科学省に関わるような)教育研究活動をおこないながらも、日本全国さらには海外に広がるネットワークを持っているからです。そこで今回、朝鮮学校を認可している28の都道府県にある研究機関に所属している研究者が「呼びかけ人」となり、日本政府に対して抗議をおこなうという方式を採ることにしました。ご理解いただき、ご協力いただければ幸いです。