要請書提出行動(5月26日)についての報告

 ご報告が大変遅くなりましたが、去る5月26日、「朝鮮学校への地方公共団体補助金に対する政府の不当な介入に抗議する研究者有志の声明」を文部科学省の担当者に賛同者の皆様の名簿(5月25日午前までに集約した882名分)とともに提出いたしました。提出行動とその後の記者会見について、参加した関東地方の呼びかけ人からの報告です。

 本声明に関する報道へのリンクについてはこちらをご覧下さい。

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朝鮮学校への地方公共団体補助金に対する政府の不当な介入に抗議する研究者有志の声明」文科省提出行動のご報告

 

賛同者のみなさま

 5月26日、「朝鮮学校への地方公共団体補助金に対する政府の不当な介入に抗議する研究者有志の声明」の文科省提出を行いましたのでここにご報告いたします。提出行動に参加したのは以下の6名です。

中野敏男(東京外国語大学名誉教授)
坂元ひろ子(一橋大学名誉教授)
福岡安則(埼玉大学名誉教授)
米田俊彦(お茶の水女子大学教授)
鵜飼哲一橋大学教授)
樋浦郷子(国立歴史民俗博物館准教授)

 文科省の側の「対応者」は小林克嘉氏(文部科学省大臣官房国際課国際協力企画室室長補佐・G7教育大臣会合準備PTサブリーダー)と高橋洋子氏(大臣官房国際課国際交流企画グループ外国人教育政策係長)の2名でした。通知に関する説明、質疑に対する応答は、すべて小林氏によってなされました。

 小林氏は冒頭で、今回の通知は事前に「某新聞」にリークされ「歪んだ形」で伝えられてしまったため失敗したと述べ、通知は制裁の一環ではなく、補助金を廃止しろというメッセージではないと予防線を張ってきました。文科省のホームページに出ている馳文科相の当日の記者会見での発言を見れば誤解は解けるはずという立場です。「大臣の発言は重い」という趣旨のことを繰り返していました。また、「公益性」を理由に補助金を減らすという理屈はおかしいと自分も思うとも発言しました。地方自治体からは通知の趣旨について問い合わせが沢山来ているとの説明もありました。

 いっぽう外交・政治との関係にはつねに苦慮していて、今回の声明作成は難事業だったと吐露、朝鮮学校北朝鮮の関係に関する政府の公式見解は公安調査庁の報告にもとづくもので、文科省も政府の一員として「特性」に関する認識を共有している、その意味では今回の通知は、核実験、「ミサイル」発射に対する制裁という文脈を配慮せざるを得なかったとも述べました。制裁の一環ではないという前言と矛盾するのではないかという指摘に対しては苦笑いするばかりでした。

 私たちの方からは以下のような指摘や問いかけをおこないました。

(1) 教育行政は政治や外交から一定の距離をおくのが原則であり、教育委員会を指導し、手本を示す立場にある文科省はこの原則を重視すべきであるところ、外交政策としての「制裁」の論理を教育行政に持ち込んだ今回の通知はこの原則を無視したものであり遺憾である。

(2) 宗教団体や特定の主張(教育理念)を持つ団体と密接な関係にある学校は少なくないなかで、今回の「通知」が朝鮮学校だけを名指して出された根拠は何か。

(3) 文科省から自治体の長への「通知」を出すという制度はあるにせよ、今回のような「通知」の例が他にあるのか、ないとすればこの「例外」性の根拠は何か、「通知」が世論のなかで「在日苛め」と受け取られている事態をどう考えているのか。

(4) 今回の「通知」は「柔らかい脅迫」と呼ばれるべきものであり、すでに右派系の地方議員が「通知」を引き合いに出して圧力をかけている事実があり、地方教育行政にとって大きな脅威となっている現状をどう考えているのか。

(5) 「通知」の効果は内容ばかりでなく出されたタイミングも大きく、制裁の一環として出されたのではないという説明は説得力に欠ける。

(6) 朝鮮学校に対する抑圧政策への批判を含む国連人権委員会の勧告に対し、日本政府は従来一貫して日本にレイシズムはないという立場を取っているが、文科省は方針の策定にあたって事実から懸け離れたこの不当な前提を共有してはならず、日本の歴史と現実を直視することから再出発すべきである。

【記者会見】

 続いて文科省記者会で記者会見をおこないました。参加した報道機関はNHK、朝日、毎日、読売、産経、北海道新聞共同通信時事通信、そして朝鮮新報でした。会見の模様は、NHKのニュースで報道されました。この場で各社から出された質問とこちらからの応答について、以下簡単に記します。

 賛同者が大学教員の枠におさまらないことについては、民族学校の受験資格問題や無償化排除への抗議運動からの経緯を説明し、今回はかならずしも大学への所属にこだわらず賛同を呼びかけることにしたと答えました。また、賛同者の人数について多いと思っているかという質問もありました。これには2週間でこの数に達したことに手応えを感じていると答えました。また、説明資料にある、朝鮮学校になんらかの助成金を支給している地方自治体の数(27都道府県154市23区33町)は誰が集計したのかという質問がありました。こちらからはその他、朝鮮学校が存在する全地方自治体から呼びかけ人を募る形式を取ったことの趣旨、これから各地方で働きかけを行う方針であることを伝えました。

 以上、簡略ながら、ご報告に代えさせていだきます。

5月29日 文科省提出行動参加者一同